昨日、税制改正の案が発表されました。
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/pdf085_1.pdf
早速、重要度の高いものを取り上げてみます。
私が注目したのは次の8つです。
中小企業への影響度の高いものを選んでいます。
試算、解釈については、現時点の見解であることをご了承ください。
目次
1 交際費に税金がかからなくなる
飲食費、贈答品、ゴルフなどの交際費には、これまで一定の割合で税金がかかっていました。
中小企業(原則として資本金1億円以下)であれば、1事業年度600万円までは、1万円の交際費で、300円〜400円の税金がかかり、600万円を超えると3,000円〜4,000円の税金がかかります。
(1人当たり5,000円以下の取引先との飲食は除く)
この限度額が、800万円に変更となり、交際費が800万円までであれば、税金はかからなくなります。
試算するとこうなります。
交際費を多く使えば使うほど、影響額は大きくなります。
おそらく今年の4月以降に開始する期から適用されるでしょう。
この改正により交際費が増えるということはないでしょうが、1つ大きなメリットがあります。
それは交際費の処理にかかる手間が減ることです。
今だと,交際費か会議費か、1人当たり5,000円かどうかの事務処理が少なからずあります。
2 設備投資をすると税金が控除される
似たような制度はありますが、今回の改正の内容は次のとおりです。
・設備投資額の3%の税額控除(税金を差し引く)か、30%の特別償却(減価償却を前倒し。トータルでは変わらない)を選択できる
・建物、備品、自動車、福利厚生施設等は除く→機械などが該当すると思われます。
・当期の減価償却費を超える設備投資が必要→一定以上の投資が必要となります。
・前期に取得した設備の取得価額合計額の110%の投資が必要→結構厳しい規定です。投資を継続しており、その投資額が前年より増えたケースになるでしょう。
同様に、商業・サービス業等の設備投資も優遇されます。
商工会議所等から経営改善のアドバイスを受けて、店舗の改修等を行えば、その7%の税額控除又は30%の特別償却ができます。
※税額控除は資本金3,000万円以下の場合のみ選択でき、一般的にはこちらを選びます。
3 給料を上げると税金が控除される
面白いのはこの制度です。
給料が増加した場合は、その増加した分の10%の税金が控除されます。
ただし、役員及びその関係者は除きます。
前期に1,000万円の給与を支払っていた場合、当期に1,500万円の給与を支払えば、増加した500万円×10%=50万円が控除されます。
ただし、法人税額の20%が限度です。
この事例では、250万円以上の法人税額であれば、50万円全額が控除されますが、100万円の法人税額だと、20万円だけが控除されます。
他にもいろいろと罠はありそうです(^_^;)
4 雇用すると税金が控除される制度が改善
前期に比べて、2人以上増加(純増。役員等除く)した場合、1人当たり20万円の税金が控除される制度があります。
すでに開始していて、当事務所のお客様でも該当しているところが多いです。
この制度の控除額が、1人当たり20万円から40万円にアップします。
さらに「適用要件の判定の基礎となる雇用者の範囲について所要の措置を講ずる」と書いてありますので、なんらかの条件緩和が行われる見込みです。
この制度は、<3>との選択適用で、どちらか1つしか適用できません。
どちらが有利か?というシミュレーションを作るのは楽しそうです(^^)
5 相続税の対象が広がり、税額も上がる
震災のため延期となっていた相続税の改正、やはり実施となりました。
相続税は、一定の金額を差し引いて計算できるしくみです。
今回は差し引ける金額が変わりました。
これまでは5,000万円+1,000万円×法定相続人の数を差し引くことができましたが、今後(平成27年1月1日以降の相続)は、3,000万円+600万円×法定相続人の数となります。
法定相続人が3人の場合、今は8,000万円を差し引くことができます。つまり、8,000万円までの財産であれば相続税がかからないわけです。
改正後は、この金額が4,800万円になります。
この改正により、相続税が発生するケースが増えるといわれています(現状約4%→6%)。
また、相続税の税率も上がります。
上がるのは、相続財産が3億円以上の税率です。
以上の改正を考慮して、試算してみました。
法定相続人が3名という設定です。
その他、土地に関する優遇制度が広がる、未成年や障害者の場合の控除が増えるといった改正もあります。
6 所得税の最高税率が上がる
所得が4,000万円超の方の所得税率が上がります。
影響額は次のとおりです。
[所得]とは、収入から経費(給与の場合は給与所得控除)を引き、さらに所得控除(扶養や医療費、基礎)をひいたものをいいます。
7 贈与税の税率が変わる
贈与税は贈与対象額(贈与財産から110万円を引いた金額)1,000万円超〜1,500万円以下の税率が下がり、3,000万円超の税率が上がります。
8 贈与が少しやりやすくなる
7とあわせて、20歳以上の方が直系尊属から贈与を受けた場合の税率が下がります。
試算すると次のようになります。
贈与を促進する狙いでしょうが、それでも贈与税は高いです。
5,000万円を贈与するには、最も安くても2,100万円の税金がかかります。
通常、やらないでしょうね。
他国のように贈与税ゼロにでもしない限り無理でしょう。。。
贈与に関しては、30歳未満の孫に教育資金を贈与した場合に1,500万円まで無税となる制度ができます。
平成25年4月1日から平成27年12月31日までの贈与が対象です。
これは面白いかもしれません。
教育資金がどこまで含まれるかにもよりますけどね。
なお、贈与を受けた人が30歳に達した場合に贈与した資金を使い切ってなければ、その日にその金額の贈与があったとみなされます。
税率が高い贈与税がかかってくるため、注意が必要です。
その他
その他にも改正があります。
・自動車取得税が廃止
・相続時精算課税制度の条件緩和
・不動産譲渡に関する印紙の減額
・相続税の納税猶予の条件緩和
・住宅ローン控除の拡充
など。
住宅ローン控除は、拡充されたと毎回ピックアップされますが、実はそうではありません。
あくまで物件価格の1%が控除額ですので、2,000万円なら20万円、3,000万円なら30万円しか控除されないのです。
最大で40万になろうと、なかなか最大控除額を使える方は少ないでしょう。
税金の優遇が必要な層がむしろ活用できないことがほとんどです。
また、税金の控除は、あくまで「発生した税額から控除」されます。
40万円の税金の控除を受けるには、給与だと700万から900万程度の収入が必要です。
扶養の状況、医療費があるかどうかなどによっても変わりますので、40万円の住宅ローン控除を全額受けることができるケースはなかなか厳しいでしょう。
1つずつ解説していこうとも思ったのですが、まずはファーストインプレッションとして書いてみました。
昨日の夕方、ようやく書籍の執筆が完了しました。
今回が最終チェックですので、私の手を離れます。
発売は2月16日です。
詳細は改めて記事にします。
■著書
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ひとり税理士のギモンに答える128問128答
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新版 ひとり社長の経理の基本
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【監修】十人十色の「ひとり税理士」という生き方