PCを買ったときの経理には、2種類の方法があります。
これを間違えるとどうなるか、間違えた場合の処理をまとめてみました。
※機内にて iPhone X
PCを買ったときの経理
PCを買った場合(PCに限りません)、処理の方法は、2つあります。
・個人事業主(フリーランス)か法人(原則として資本金1億円以下)
・青色申告
・10万円超30万円未満の場合、申告書に明細をつけている
なら、
・30万円未満なら「消耗品費」
・30万円以上なら「工具器具備品」
です。
※経理を税込みでやっているなら、税込み、税抜きなら税抜きで判断します。
※年(年度)で合計300万円までという限度があります。
※(しかし、「消耗品費」はまだ100譲って許すとして、工具器具備品って。。工具と器具ないし)
これら2つには、処理する項目以外にも、大きな違いがあります。
それは、経費になる金額、つまり節税になる金額です。
数字の基本
前提となる数字の基本についておさらいしてみましょう。
事業の数字は、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)があります。
P/Lは、こういったもの。
売上や経費があり、利益を計算して、そこからさらに税金を計算します。
P/Lは、その年(年度)でしめくくるものです。
12/31で終わって、1/1時点は、売上も0、経費も0、利益も0からスタートします。
そもそも、一定の期間(通常1年)の利益を計算するものですので、リセットしないとおかしなことになるわけです。
B/Sはこういったもの。
預金や工具器具備品、売掛金などがあり、特徴としては、次の年(年度)にそのまま持ち越します。
そうしないと、預金があるのに0、払っていない代金があるのに0になるというおかしなことになるわけです。
B/Sは税金の計算に使いません。
P/Lのみを税金の計算に使います。
PCを「消耗品費」で経理する意味
・30万円未満なら「消耗品費」
という経理の意味は、PCをP/Lに経理するということです。
30万円未満、たとえば、29万円のPCの場合、「消耗品費」でP/Lにのります。
P/Lにのった29万円がそのまま経費となり、税率を30%とすると、節税額は、8.7万円です。
B/Sには何もないので、次の年には影響しません。
この年で終わりです。
PCを「工具器具備品」で経理する意味
・30万円以上なら「工具器具備品」
という経理の意味は、PCをB/Sに経理するということです。
30万円以上、たとえば30万円のPCの場合、「工具器具備品」でB/Sにのります。
このままというわけではありません。
「工具器具備品」は、複数年にわたって経費にします。
「複数年使うから複数年で経費にすべし」というルールなのです。
その経費を「減価償却費」といいます。
ただし、「そうはいっても小規模のところで小さい金額だったら経費にしてもいいよ」というルールもあり、その基準が30万円なのです。
30万円以上なら、そのルールはないので、いくら小規模でもひとりでも、「工具器具備品」にしなければいけません。
そして、「複数年で経費」の年数は、その種類によってだいたい決まっています。
PCの場合は4年。
4年も使わないよ(実際使わないほうがいいでしょう)という意見もあるでしょうがルールがあるのでしかたありません。
30万円を「工具器具備品」にして、
法人の場合は、最大15万円の減価償却費となります。
(個人の場合は、原則として7.5万円です。届け出を出せば15万円にできます)
いつ使い始めたかによって月割りしますので、1月1日~12月31日の期間で、12月に使い始めていたら、1.25万円の減価償却費です。
その節税額は、税率を30%とすると、4.5万円。
先ほどの8.7万円と比べるとかなり小さくなります。
そして、B/Sの「工具器具備品」の残りの15万円は、次の年に繰り越され、
その金額をもとに減価償却費を計算します。
この場合は、7.5万円、節税額は、2.2万円です。
これを繰り返し、次のように経費に入れていくわけです。
(最後の最後は、1円だけ残します)
30万円を基準に、これだけ経理の方法が変わるわけです。
30万円以上でも「消耗品費」
では、30万円以上でB/Sの「工具器具備品」にすべきところを、P/Lの「消耗品費」と間違ってしまったらどうなるのでしょう。
本来なら、節税額は4.5万円。
4.5万円、税金が少なかったということになります。
この事例は、税率を30%とした場合ですので、これよりも増える場合、減る場合もありますが、税金が少なかった事実は変わりません。
もし、こう間違っていた場合は、教科書通りでいけば、修正申告という手続きをし、少ない分の税金を払う必要があります。
ただ、その間違った年(年度)の利益がマイナスだったり、それまでのマイナスの蓄積があったりして税金を払っていない場合は、そのままでもいいかなと。
税金は変わりませんので。
AI搭載会計ソフトとうたっているfreeeでは、30万円超えてるけど大丈夫?と警告してくれます。
(ただ、記事執筆時点ではこの機能は税理士のアカウントのみです)
30万円未満でも「工具器具備品」
逆に、30万円未満のPCを買った場合に、P/L「消耗品費」とできるところを、B/S「工具器具備品」にしてしまったらどうなるのでしょう。
ほんとは、これですっきりしていたはずが、
延々と4年引きずってしまうわけです。
税金を多めに払ってしまっていることになります。
通常は、「多すぎたから返して」と言えるのですが、この場合は言えません。
このまま4年、ちょっとずつ経費にするしかないのです。
なお、4年たたずに処分(廃棄、売却)すれば、そのときに処理してきれいにできます。
AI搭載会計ソフトfreeeだと、どう判断してくれるか?
「工具器具備品だけど、消耗品費にできるんじゃない?」とは、言ってくれません。
「工具器具備品だけど、固定資産台帳ってのに登録されてないわよ」とだけです。
※工具器具備品は、固定資産台帳というものに登録し、減価償却費を計算しなければいけません。
まあ、教科書通りの対応といえば、そうですが。
税金が少なくなってしまう指摘を重点的にやっているのでしょう。
ケースとしては、
・30万円以上なのに「消耗品費」
よりも
・30万円未満なのに「工具器具備品」
という事例のほうが多い気がします。
そもそも30万円以上のものを買うケースは少ないでしょうし。
ソフトウェアも同様です。
AIにはこの辺も判定してほしいのですが、今「AI」と言われているものは、そのすべてが自律的に判断するわけではなく学習するわけではなく、結局はヒトがプログラムしているものがほとんどですのでしかたありません。
なお、科目を登録するときも、「10万円以上のもの」とあります。
「一般的に」という但し書きで。
これは、前述した要件によってメッセージを変えるわけにもいかないからでしょう。
が、経理を間違える可能性の1つでもあります。
最近、30万円以上のPCも増えてきていますので、経理に注意しましょう。
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