外注費を支払い、[支払調書]という書類を作っている場合、マイナンバー導入後に気をつけなければいけないことがあります。
※Excelで作成→Keynoteで加工。スクリーンショット
外注先のマイナンバーが必要になる
個人の外注費を払っている場合に、支払調書を作るケースがあります。
その年にいくらの報酬を払って、いくらの源泉所得税を差し引いたかという書類です。
これは、外注先(個人事業主)の収入を把握するためのものでもあります。
個人がちゃんと確定申告しているかどうかのチェックです。
これまでは、支払調書の様式はこのようなものでした。
マイナンバー導入後はこのような様式に変わります。
支払者(個人又は法人)のマイナンバー(個人番号又は法人番号)と、支払を受ける者、つまり外注先のマイナンバー(個人番号)を入れておかなければいけないのです。
※個人番号は12桁、法人番号は13桁
外注費の支払調書(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書)を作成する場合は、その支払先のマイナンバーが必要となります。
それぞれの外注先から、マイナンバー(個人番号)を集めなければいけません。
最初に必要なのは、2017年(平成29年)1月。あわてずにマイナンバー回収
マイナンバー回収の時期
このマイナンバー(個人番号)はかなりやっかいです。
マイナンバー自体がもれたとしても、大きな被害に合う可能性は低いのですが、法律上、厳重な管理が求められています。
過度に恐れる必要はありませんが、その取り扱いには十分気をつけるべきです。
今年(2015年・平成27年)の10月からマイナンバー(個人番号)が外注先へも通知されますが、あわてることはありません。
外注先のマイナンバーが必要となるのは、2016年分(平成28年分)の支払調書からです。
この支払調書は原則として翌年の1月に作成、提出しますので、2017年(平成29年)1月にマイナンバーが必要となります。
それまでに集めれば大丈夫です。
それまでに、いいシステムやよりよい方法を考えておきましょう。
(当ブログでも記事にしていきます)
外注先からマイナンバー(個人番号)を紙の書類で出してもらうことはさけるべきです。
郵送時の事故も考えられますし、その書類の保管という手間・コストもかかります。
信頼できるオンライン上のシステムを使い、入力してもらうのが、最も効率的だと考えています。
月額980円でそういったシステムが出る予定です(詳細はまだ発表されていませんが)
PCやデータの管理、セキュリティは必須ですが、これまでもやっているはずです。
マイナンバーよりも、本人確認が大変・・
問題は、マイナンバー(個人番号)とともに、本人確認が必要であること。
本人確認とは、番号確認と身元確認です。
パターン1として、
・番号確認→通知カード(マイナンバー、住所等が記載された2015年10月頃に誰にでも届くカード)
・身元確認→身分証明書等
パターン2として、
・番号確認&身元確認→個人番号カード(マイナンバー、住所等が記載された、2016年1月以降に任意で取得する写真付きICカード)
があります。
パターン2の個人番号カードがあれば、その1枚で本人確認(番号&身元)ができます(通知カードは写真がないため単体では不可)
個人番号カードの方が確認が楽です。
身元確認は、身分証をアップロードしてもらうしくみを利用する、身分証をメールで送ってもらうなどが考えられます。
集めるタイミング
外注先へは、たとえば、2016年3月に通知して、3月末までに、
・通知カード+身分証明書等
又は
・個人番号カード
の提出を求め、それ以降は契約の都度に提出を求めるという方法が考えられます。
提出を求める時期は、会社の業務の流れや方針で決めればいいでしょうし、今年の10月から集め出してもかまいません。
(マイナンバー導入は2016年1月からですが、事前に集めてもいいことになっています)
実際はどうするか??
以上が教科書どおりの取り扱いですが、実際はどうするかは非常に難しい問題です。
外注者ひとりひとりに、身分証を求めるのか?というのは現実的に難しいでしょう。
身元確認は、従業員に対してであれば、”雇用関係にあり、雇用契約時などに本人であると確認できていれば身元確認は省略してもいい”というされ、外注先に対しては、国税庁告示において、”継続取引を行っている者から個人番号の提供を受ける場合で、その者を対面で確認することによって本人であることが確認できる場合”は、身元確認に該当するとあります。
対面で、つまり、会ったことがある外注先なら、それをもって身元確認とできるということです。それ以外の場合は、身元確認が必要となります。
ただ、支払調書を税務署へ提出する際、その身元確認をしたという証明なり身分証なりを提出するかというとそうではありません。
「身元を確認した」という事実があればいいのです。
現実問題としてこれをどう考えるか?はそれぞれで判断していただければ。
しかし、身元確認をしなかった場合、外注先から、「あの会社は身元確認しないけど大丈夫かな??」と思われる可能性もあります。
会社としてどうするかを決めるのはまだ時間がありますので、まわりの動向もみながらじっくり考えましょう。
これを機に支払調書の交付はやめよう
マイナンバーは役所のためのもの
マイナンバーは、【役所へ提出する際】に必要になるものです。
契約時や業務依頼時には必要ありません。
役所(税務署)のための制度なのです。
(多少は今後われわれにメリットがありますが)
そもそも、支払調書自体も、役所(税務署)のための制度にすぎません。
支払調書の本来の意味は、税務署へ提出すること(一定の金額以上)であり、外注先(支払先)へ支払調書を送付することではありません。
法律では、「税務署へ提出」とだけ定められています。
しかし、慣習から、税務署とともに、外注先(支払先)へも送付し、その支払調書を元に、外注先は確定申告をしていることも多いです。
確定申告には支払調書は必要ありません。
(税務署等に相談に行くと、支払調書の提出を求められることがありますが、本来必要ありません。税理士からも求められることがあるかもしれませんが本来必要ないものです)
外注先、個人事業主は、自分で売上を把握すべきです。売上の把握をやらないようでは、事業をやっているとはいえません。
私も個人で契約している出版社、講演等の支払調書を例年1月から2月に受け取りますが、そのまま捨てています。
(顧問契約のお客様から私に対しての支払調書は、私が作って税務署にだけ出しています)
支払調書が来ても1月末や2月だと遅いですし、当然自分で売上も源泉徴収税額も把握しているからです。
同じような方も多いかと思います。
支払調書にマイナンバー(個人番号)を入れて配ってはいけない
この慣習が、マイナンバー導入後、問題を引き起こします。
マイナンバー(個人番号)は、限定された目的以外には使えません。
その目的とは、税、社会保障、災害など、役所に対する手続きです。
・支払調書を税務署へ提出する→マイナンバー(個人番号)の利用目的として正しい
・支払調書を外注先へ送付する→マイナンバー(個人番号)の利用目的としては正しくない
となります。
支払調書を外注先へ送付する際は、このようにマイナンバー(個人番号)がないバージョンを作らなければいけません。
※法人番号は、ネットでも公表され利用目的も限定されていないため、そのまま載っていても問題ありません。
個人事業主が外注先へ払う場合は、個人のマイナンバー(個人番号)なので、消す必要があります。
自分の番号なので、問題ないといえばないのですが。
少なくとも、外注先(支払先)のマイナンバー(個人番号)は入れてはいけません。
法律違反になります。
2つのバージョンの支払調書を作る必要があり(システムでかんたんに対応できることではありますが)、管理にも手間がかかるので、これを機に支払調書を外注先へ配布するのをやめるのも手です。
結構な手間ですし、コストもかかりますし、もしやめたいと思うのならいいチャンスではないでしょうか。
支払側は、
・支払調書の送付という無駄な手間とコスト
・今後はマイナンバー(個人番号)管理リスク
受取側のフリーランス・個人事業主は、
・「確定申告に支払調書が必要」という誤った認識
・支払調書が届かないというストレス、待つ手間
・支払調書に依存する経理体制の問題
と、ゆがみがあり、双方が幸せでないのです。
(このゆがみをなくすために双方へ情報発信しています)
【関連記事】フリーランスの確定申告 よくある質問ー作成・提出、売上、経費ー |EX-IT
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Amazonも支払調書を取りやめています。
【関連記事】Amazonが支払調書の古き慣習・誤解を打ち破った件 |EX-IT
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マイナンバー、外注先のフリーランスの方からの視点の記事はこちらです。
【関連記事】マイナンバー導入に向けてフリーランスが知っておくべきメリット・デメリット・スケジュール |EX-IT
リンク
シルバーウィーク、執筆に集中しています。
合間にパン屋開拓をしながら。
今日はちょっとランをして引き続き執筆します。
【昨日の1日1新】
※詳細は→「1日1新」
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