「スーツが経費になる」「スーツで税金が戻ってくる」という報道やニュースが多いのですが、冷静に真実を把握する必要があります。
去年から、スーツを経費にできる制度ができたけど・・・
去年(2013年・平成25年)から、会社員が節税できる制度ができました(正確には、節税の範囲が広がりました)。
去年の1月にこのような記事を書いています。
会社員の書籍代、資格取得費などが経費になる<特定支出控除>は実際に使えるか?ー | EX-IT
税金は、収入から経費をひいた利益(所得)によって計算されます。
経費が増えると、税金は減るのです。
通常、会社員の場合、給料から一定額の経費しか引くことができません。
年収500万円なら154万円、年収1,000万円なら220万円の経費です。
これを給与所得控除といいます。
これ以外に、書籍、交際費そしてスーツなどが経費に落とせるようになりました。
「スーツを経費にできる」というのは特に注目されています。
・会社で必要なことが多い
・金額が大きい
・税金が減らせる
・一般的に経費として認められていないスーツが経費に落とせる
という点が注目されている理由でしょう。
この1年、雑誌やネットの記事でも、「スーツを経費にできる!」といったものをよく見かけました。
しかし、そうそうおいしい話ではないのです。
スーツで節税するための6つのハードル
スーツで節税するためには、次のようなハードルがあります。
1 会社の証明が必要
次のような様式で、会社から証明してもらう必要があります。
ややめんどくさいでしょう。
様式はこちらにあります。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/871222/01.htm
2 確定申告が必要
さらに、レシートを保管し、さらに確定申告が必要です。
まあ、ここまでは節税のためならやれる範囲でしょう。
3 スーツを結構買わないと節税にならない
10万円のスーツを1着買っただけでは、節税になりません。
年収に応じて、一定の金額以上でないと、意味がないのです。
たとえば、年収300万円の方の場合、年間に54万円以上スーツを買う必要があります。
以下、次の表を参考にしてください。
スーツだけで節税するなら、年収に応じて節税基準額以上のスーツを買う必要があります。
ここでいう「年収」とは、額面金額、所得税や社会保険料を引く前の金額をいいます。
給与明細の「課税支給額合計」や、源泉徴収票の「支払金額」です。
1,500万円超は、一律125万円となります。
4 スーツだけでは65万円の限度がある
「年収がもっとあるから、スーツ代はもっと使う」という方もいらっしゃるでしょう。
しかし、スーツ代だけでは、年収380万円以上の方は節税できません。
スーツだけでは65万円までしか経費に入れられないからです。
(図はキリのいい200万円、300万円、400万円・・・で計算してます)
赤い部分が経費に入れることができる枠となります。
この制度はスーツだけではなく、次のものが対象です。
(1)通勤費
(2)転居費
(3)研修費(セミナー)
(4)資格取得費(1年間分しか落とせない)
(5)帰宅旅費(単身赴任などの場合で自宅に帰る旅費)
(6)書籍代
(7)衣服代(スーツ)
(8)交際費
ただし、スーツを含む(6)(7)(8)の合計は65万円が限度となります。
年収400万円なら67万円、年収500万円なら77万円、年収600万円なら87万円をこえる必要があり、実質的には、 スーツだけではなく、他の経費(上記(1)から(5)の合計額)を組み合わせるしかないのです。
5 節税額は税率をかけたもの
さらに、基準額を超えた部分の金額だけ節税できるわけではありません。
その金額に税率(所得により変わる)をかけたものが節税額となります。
年収300万円の方が65万円分スーツを買ったとしたら、その節税額は、65万円から基準額54万円を引いた11万円ではありません。
11万円に税率(5%)をかけて計算した5,500円が節税額(所得税)です。
(住民税にも影響があります)
65万円のうちの5,500円ですので、かなり少ないといえるでしょう。もちろん戻ってこないよりはいいのですが。。。
6 そもそもそんなにスーツを買えない(買わない)
そもそもスーツを65万円も買わないでしょうし、買えないでしょう。
仮にスーツがたくさん必要となったとしても、今は安くていいスーツもありますし、セールで買えば安くで買えます。
合計金額も少なくなるはずです。
派手だけど、実際は使えない制度も多い
「スーツが経費に!」「スーツで節税」と派手に報道されていますが、実質的には使えません。
よほど特殊なケースではないでしょうか。
このように、「一見派手だけど使えない」「お得そうに見えてそうではない」というものが、税金にはよくあります。
「節税も考えてますよ」というアピールだったり、週刊誌や新聞の売り上げを伸ばすためだったりするのです。
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