先週、税理士試験が行われました。
私が最後に受験してから10年。改めてこの試験を振り返ってみました。
いろいろ複雑!税理士試験のしくみ
税理士資格を取るには、次の3つの方法があります。
・試験を受けて合格する
・税務署に一定期間勤める
・公認会計士や弁護士が登録する
このうち、試験合格者は11科目のうち5科目に合格しなければいけません。
(2科目を試験で合格し、大学院に行くことで残りの3科目を免除されるという制度もあります。)
科目は、簿記と財務諸表論という会計の科目が必須、法人税又は所得税のうちから1科目、残りは自由に選べます。
それぞれ難易度、ボリューム、自分の興味、独立後の仕事をふまえて、悩みつつ選ぶことになります。
試験は毎年8月上旬。
9月から勉強を始めて、1年間勉強して臨むのが通常の流れです。
試験の合格基準は、上位約10%。おおむね60点以上が合格といわれていますが、60点以上が多い場合は、上からだいたい10%が合格となります。
科目ごとの合格率は、科目によっても年によってもまちまちで、受検者数が少ないからといって受かりやすいわけでもありません。
40点でも合格することもあれば、80点でも不合格の場合もあるのです。
合格答案は返却されず、点数やどこを間違っていたかはわかりません。
しかも合格発表の時期は、12月。4ヶ月も待たされます。
これが複数年受験において、作戦を立てる上でも、モチベーションを維持する上でもやっかいです。
(この4ヶ月+年末年始にしっかり勉強できるかどうかが合否を決めると思っていました)
試験のボリューム、現実的な合格確率から考えると、1年に受験できるのは、最大3科目。
最短でも2年、1年に1科目ずつだと5年、平均して7年(一説には9年)かかるといわれています。
一度合格した科目は一生有効ですが、7つ集めなければ意味がないドラゴンボールと同様に、5科目そろわなければ意味がありません。
科目合格制という性質から「働きながら合格できる」といわれていますが、働きながらだと、勉強時間も減りますので、なかなかそうもいかないのが現実です。
運良く合格できた要因
2003年、今から10年前の8月に受験した試験で、なんとか5科目そろい、税理士試験から抜けることができました。
2000年の4月に受験を決意して以来、4回受験しています。
2000年 1科目(合格0)、2001年 3科目(合格2)、2002年 2科目(合格2)、2003年 1科目(合格1)という道のりです。
1回目の試験は勉強期間3ヶ月で受け場慣れの意味もあり、その後の2年で終わらせる予定でしたが、1年余計にかかりました。
とりあえず「30歳までに合格する」という目標は達成できましたが、正確にいうと、31歳になる12月の誕生日前に合格発表があったという感じです(^_^;)
10年たった今、改めて考えてみると、なんとか合格できた要因は次のようなことだと思っています。
・覚悟、危機感を持って勉強した
他の受験生との差として、この危機感が大きいです。
税理士受験は、真剣に受験に望んでいる人が少なく感じました。
合格しなくても、仕事があればそれほど困りませんし、合格したからといって賞金がでるわけでもなくいばらの道は続きます。
独特の試験制度により、何回も受験することに慣れてしまうこともあります。
浪人という概念もなく、「絶対合格する!」という覚悟がない受験生が多い気がします。
危機感をもって臨まないと勝てません。
「とりあえず税理士をとろう」「税理士の次は○○の資格をとろう」「資格とらなくても食っていける」という状態では、勝ち残るのはなかなか難しいです。
(とびきりの才能や集中力があれば別でしょうが。。)
だからこそ、短期決戦で合格しなければいけないと感じていました。
私は27歳で公務員を辞めて後がなかったこと、限られた時間、限られたお金(貯蓄と税理士事務所の安月給)によりその危機感はかなりのものだったのです。
・自分なりの勉強方法を研究した
時間が限られている中、とにかく「方法」を研究しました。
問題を解くのでも、どうやったら効率的に、かつ効果的にできるか、どうやったら暗記がうまくいくか、などをひたすら考え、自分なりの、自分にあった、ストレスのない勉強方法を早期に確立できたのは大きいです。
(これは今もやってますね)
PCを使う(Excelでデータベースを作る、分析する、Wordで暗記して練習時は一切手書きしない)、本番で計算問題から解く、時間を限定してスピードを上げる、間違いノートなどをやっていました。
・型をしっかり身に付けた
3年3ヶ月の受験勉強期間は、TACという専門学校に通いました。
(一部Web受講の時期あり)
しっかり通学し、いわれたことは100%やっていたのは大きかったと思います。
自分なりの勉強は、いわれたことをやった上でやっていたのです。
そのかわり学校の先生選びはシビアにやり、合う先生のいる学校(水道橋や池袋、ときどき町田)に通っていました。
型を身に付けるという意味で学校は重要です。
これも、今、やっていますね。
自分なり+型(読書、セミナーなど)の組み合わせが効果的です。
試験脳を切り変える必要性
それなりに苦労と我慢、時間とお金を投資してくぐり抜けた試験ですが、あくまで単なる「試験」です。
試験に合格した後(合格する前も含む)、お客様に何を提供できるかが重要となります。
今年も、試験問題を見てみましたが、意味のわからない問題がたくさんありました。
私の勉強不足かもしれませんが、少なくともこの10年で実際に仕事の中で出てきたことのない事項も多いです。
試験では、専門用語も多く、難解な言い回しも多いのですが、それらを読み解き、使わなければ合格できません。
専門用語や難しい言い回しは、お客様には必要ないものですからね。
また、試験範囲は限定されており、あくまで会計や税金のルールしかありません。
今、私が提供していることの8割、もしくはそれ以上は、試験勉強で必要なかったことです。
・これは経費になるか?
・資金繰りをどう改善すればいいか?
・資金調達、金融交渉との付き合いはどうすべきか?
・給料はどのくらいまで払っていいか
・税務調査が入るけどどうしよう・・・
・効率的な経理の方法は?
・税務署が怪しいと思う決算書とは?
・今期の税金はどのくらいになりそうか?
・効果的に税金を減らすにはどういう方法があるか?
・e-Taxで申告、納税するには??
試験は試験として考え、合格したら頭を切り替え、試験脳から抜け出す必要があります。
ある意味、合格までの努力や苦労を否定しなければいけません。
(人は自分の過去を否定することで成長すると思っています)
試験にずっぽりはまってしまうと、この試験脳から抜け出すのが難しくなってしまいます。
だからこそ、頭を切り替えなければいけません。できれば短期間で合格するのが好ましいでしょう。
『社長!「経理」がわからないと、あなたの会社潰れますよ』は、試験脳から抜け出して書いたつもりですが、数年後に自分で読んだときに「まだまだだな」って感じるのかもしれません(汗)
税理士については本を出しています。
こういった記事も書いています。
【関連記事】税理士として独立するために必要な戦略ー税理士試験合格・実務経験証明取得・独立時ー | EX-IT
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昨日は、メルマガ税理士進化論の読者限定で、オフ会をしました。
参加していただいたのは、受験生、すでに独立されている方など9名。
私も刺激をいただきました。
また開催します。
■著書
『税理士のためのプログラミング -ChatGPTで知識ゼロから始める本-』
『すべてをがんばりすぎなくてもいい!顧問先の満足度を高める税理士業務の見極め方』
ひとり税理士のギモンに答える128問128答
【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本
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【監修】十人十色の「ひとり税理士」という生き方