会社員が、副業をやった場合に、税金上事業として認められることはできるのでしょうか?また、青色申告はできるのでしょうか?
整理して解説します。
事業かどうかで税金が変わる!
まず、副業が事業であるかどうか?の判定が重要となります。
なぜなら、給料の税金と関係があるからです。
給料500万円の方は、だいたい所得税が13万円かかります。
(他に住民税もかかります)
経費の134万円は、計算される給与所得控除という経費です。
給料500万円だと、経費154万円引いた346万円をベースに税金を計算します。
(その他、扶養や健康保険、年金などを加味します)
このときに収入500万円、経費400万円、利益100万円の副業をやったらどうなるのでしょうか。
所得税は、約23万円になります。
では、事業で100万円のマイナスが出た場合には、どうなるのでしょうか?
ここで、事業と認められるかどうかで税金が変わってきます。
確定申告書では、事業であれば、事業所得の「営業等」に、そうでなければ、雑所得の「その他」という区分となるのです。
事業所得であれば、所得税は7万円となり、差額として給料から差し引かれた税金が戻ってきます。
雑所得(事業ではない)であれば、所得税はそのまま13万円となります。
この場合、マイナスはなかったものとみなされるのです。
事業であると、税金が減り、そうでないと税金は変わりません。
税金上、というよりも税務署的には、大きな問題なのです。
事業かそうでないかの判断
法律からみる「事業」の定義
「じゃあ、事業の定義って何?いくらが基準?何をやったら事業になる?」という疑問があるでしょう。
法律上は、こう書いてあるだけです。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
抽象的で、よくわかりません。。。(法律ってこういうものです)
一方雑所得とはこう定められています。
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
通達というものから見る「雑所得」
「実際の業務ではこうやりましょう」と税務署内で決められているのが通達というものです。
法律ではないため、参考程度ではあるのですが、そこには、こう書いてます。
(一部抜粋)
原稿、さし絵、作曲、レコードの吹き込み若しくはデザインの報酬、放送謝金、著作権の使用料又は講演料等に係る所得は、事業から生じたと認められるものを除き、雑所得に該当する。
一般的な原稿、講演料は、「事業から生じたと認められるものを除き」雑所得になるということです。
これも非常にわかりにくく、逆に考えると、原稿料や講演料も事業である可能性があるということでしょう。
過去の裁判から見る「事業」
過去の裁判の事例(いわゆる判例)で「事業」の定義がされています。
事業所得の「事業」とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務をいうものと解されている。(昭和56年最高裁判決)
整理すると、
・自己の計算と危険→自分で責任を取る
・独立して営まれ→起業というわけではなく、会社員の仕事とは独立しているという意味にとれるでしょう。
・営利性、有償性→お金を得ているか
・反復、継続
・社会的地位→客観的にみてわかりやすい
ということになります。
必ずしもこれに従わなければいけないということはありませんが、年に1回、講演や原稿の仕事をしたといっても、事業所得にはならないということです。
300万円が基準?
所得(利益)が300万円をこえたら、事業と認められるという噂もありますが、これは間違いです。
300万円というのは、「白色申告できちんと経理の記録を残すかどうか」の基準をいいます。
平成25年分までは次のようなルールでしたが、
・青色申告→記録を残す(帳簿といういい方をしますが、会計ソフトでOKです)
・白色申告→記録を残さなくていい(計算した結果だけ申告すれば大丈夫です。ただし、前々年又は前年の所得(利益)が300万円をこえた場合は記録を残す義務があります。
平成26年分、つまり今年からは、すべての方について、記録を残さなければいけません。
手書きだと大変ですので、会計ソフトを使うのをおすすめします。
300万円が、事業であるかどうかの基準ではないのです。
誰にでもいつでも説明できるか
「事業かそうでないかを税務署に相談しましょう」という声もよくききます。
もちろん相談しても損はありません。
ただし、そのときはOKといわれて税金を安くできても(給料の税金を取り戻せても)、結果的に事業と認められないようであれば、戻ってきた税金を返さなければいけないのです。
税金の世界は、あくまで結果、後出しじゃんけんであることを忘れないでください。
たとえば、事業でOKといいつつ、5年たち、税務署から指摘されたら、5年分さかのぼられる可能性もあります。
いつ、誰から聞かれても(税務署によっても、税務署の担当者によっても見解がかわるため)、明確な説明ができることが、事業として処理する条件です。
いちかばちかで事業にして、申告するにはリスクが大きすぎます。
そのリスクを冒すのであれば、事業の利益を増やす、給料を増やすことにパワーを注いだ方がいいでしょう。
事業のマイナスで税金を取り戻した話
「会社員で、税金を取り戻したよ」
「一切税金払ってないよ」
という話はよくあります。
こういった本も一時期話題になりました。
著者は会社員で、副業としてのイラストレーターでマイナスをだし、37年間無税で過ごしたそうです。
これも結果論なんです。
正しいか正しくないかではなく、たまたま見つからなかっただけという考え方もできます。
見つからない、指摘されないという確証はありません。
そもそも損がでるのか?
「副業で損が出た場合」といいますが、そもそも損が出るでしょうか?
会社員をやりつつ、副業をやるとすると、時間も労力も限られます。
リスクの少ない利益がでるようなビジネスをするはずです。
その状態で、大きな損(マイナス)が出る可能性は、
「仕事に関係のない経費を入れること」
ではないでしょうか。
だから税務署も目をつけるのは当然です。
もちろん、仕事に関係のある経費はしっかりといれるべきで、その結果マイナスになるのならしかたありません。
副業の経費をしっかり記録
どちらにせよ、副業の経費はしっかり記録しておきましょう。
「収入(売上)だけをみずに経費を差し引いた利益を考える」というのはビジネスの鉄則です。
セミナーなら、会場費はいくらかかったか、資料作成の参考図書はあったかなど、執筆なら執筆にかかった経費をきちんと記録し、領収書等をそろえておきましょう。
まとめ
事業であるかどうかは、
・継続性があるか
・説明できるか
・給料とのバランスで、ある程度の金額があるか(個別判断でしょうね)
・どのくらい時間・労力をさいているか
などで考えるべきでしょう。
継続して講師
継続して執筆(連載)
継続してコンサル、コーチ
ブログ収入
などは、事業になる可能性もあります。
(あくまで個別判断です)
ブログ収入や成果報酬については、税務署に対して、しくみをわかりやすく説明できるかもカギとなります。
ご存じないことが多いからです。
過去に、こういったことの説明に苦労したことがたくさんあります。
わからないものは、否定されやすいので、きっちり説明しましょう。
時代の流れに法律がついてこれてない部分も多いのです。
青にするか?白にするか?
事業かどうか、利益が出ているか出ていないか、青か白か
事業であるかどうかを判定してから、青か白かという話になります。
※会社で年末調整をしていて、確定申告をせず、給料、退職金以外で、利益が年間20万円未満であれば、確定申告の必要はありません。
(税金も払わなくてすみます)
まず事業かどうかを判定し、事業なら、プラスの場合、税金を支払い、マイナスの場合、還付されます。
プラスの場合で、さらに青色申告をしていれば65万円の経費を追加で入れることができます。
(簡易的な記録の場合、10万円ですが、会計ソフトを使っていれば65万円で大丈夫です)
事例の場合では、65万円の経費をいれて、所得税で6万円、住民税で約6万円税金が安くなるので非常に大きいです。
ただし、この65万円の控除は、所得(利益)の金額が限度です。
所得(利益)がマイナスの場合、それ以上はひけません。
すでにマイナス100万円なら、このようにさらに65万円引けるのではなく、
このままなのです。
雑所得の場合は、プラスだったら税金を支払い、マイナスだったら税金には影響ありません。
青か白かの概念もありません。
青色だと税務署に目をつけられやすい?
「青だと記録しておかなきゃいけないから、白でごまかそう」という意見もよくききます。
これは逆です。
きちんとつけている人と、そうでない人のどちらを信頼しますか?
また、法律上、白色申告については、「税務署側が推定して税金を計算できる」という制度があります。
記録がないから適当でいいというわけではありません。
受け取ってもらったから、還付があったからOK?
「どきどきしながら税務署に出しに行ったら、受け取ってくれた」
「還付金が振り込まれたから、認めてくれたんだ、ばれなかった」
というのは間違いです。
税務署は、受付→処理→還付までやって、そのあとにじっくり書類をみます。
しかも過去数年にわたってです。
今年受け付けてもらったから、還付されたからOKというわけではありません。
「後出しじゃんけん」ということを忘れないでください。
のちのちまで、安心できないので、経費を適当にいれこむなどしない方がましです。
その場限りの話じゃないですからね。
呼び出しや書類が来たら
顧問税理士がいない場合、つまり申告書作成や提出を税理士が代理していない場合、直接本人に連絡が行きます。
(無料相談会の税理士は代理ではありません。あくまで相談をうけているだけというスタンスです)
税務署に呼び出されて説明をしなければいけなかったり、電話や封書で答えたりしなければいけません。
これらは、別に怪しいからやるわけではありません。機械的にランダムに聞く場合もありますので(特に封書)、自分の判断基準を堂々と説明しましょう。
青色にするには
青色にすると、65万円控除の他、特典があります。
事業所得の方は、やらない理由はありません。
多少の手間はかかりますが、白色でも売上や経費の集計は必要ですし、今年からは要件も厳しくなりますので、やるべきです。
そのためには、申請書を出さなければいけません。
この申請書には、「ダメだったら連絡するよ、年末まで何も連絡がなかったらOKだったとみなしてね」という法律があります。
不備がなければたいてい通るはずです。
(過去に青色を取り消されたということがなければ)
申請書は、こちらにPDFがあります。
・PDFを印刷して、手書きで記入
・PDFに書き込んで印刷
して、1枚を控として、2枚送れば大丈夫です。
その際に、返信用封筒と切手をいれておいてください。
または、税務署で聞きながら書くことができます。
この申請書の提出期限は、
・すでに事業をやっていて、今年から青色申告の場合→3/17(3/15が土曜日のため)
・今年から事業を開始→事業開始から2ヶ月以内(1/1〜1/15に開始したなら、3/17)
となっています。
今年1月1日から事業を始めた方はいま出せば大丈夫です。
事業所得で白の方は、ぜひ青色申請を。3/17を過ぎると、今年は青色にできません。
来年から青色になります。
去年(平成25年)分は、もう間に合いませんので、白色にするしかありません。
「税理士が何もいってくれないから、白のまま」という方も多いようです。
めんどくさい、気がつかない、提案するとリスクになるといった考えもあり、そういった提案がないことも多いので、自分で判断して自分で申請しましょう(又は依頼しましょう)。
先日も友人からそういう話を聞きました。。
青色申告の申請書の書き方
申請書はこちらにあります。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
私がつくった書き方の一例です。
かっこ内は該当するものを書いてください。
税務署の所轄はこちらで調べられます。
https://www.nta.go.jp/soshiki/kokuzeikyoku/chizu/chizu.htm
まとめ
多様な働き方がある現在、副業もめずらしくなくなってきています。
副業禁止!という時代から、副業もOK!、そして、「副業」という言葉自体がなくなる可能性もあるでしょう。
副業をする上での税金上の考え方を、今回の記事でマスターください。
同時に大事なのは、収入を生む力、そして、数字を見る力、利益感覚です。
最近、ビジネス誠bizというサイトに、記事を転載しています。
http://bizmakoto.jp/bizid/
転載しているのは、主に、消費税、フリーランスの税務・会計に関する記事です。
【1日1新】
※詳細は→「1日1新」
カフェカイラ パンケーキ・エッグベネディクト
表参道のスタバ
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■著書
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