「年収1,000万円だと、半分くらい税金がとられる?」という話をよくききます。
そこまではかかりません。
税金のしくみで、よく誤解されている部分を解説します。
年収1,000万円の税金
年収1,000万円、つまり給料を1,000万円もらうとどのくらい税金がかかるのでしょうか?
一説には、半分近くかかるというものがあります。
仮に50%とすると、500万円が税金となるわけです。
こんなに税金を取られては大変でしょう。
また別の話では、所得税率の表から、33%かかるのでは?という意見があります。
これをみると、1,000万円は、900万円を超え、1,800万円以下の区分に入りますので、33%で間違いなさそうです。
この場合だと、所得税で330万円取られます。住民税もかかることを考えると、もっと税金は増えそうです。
これも間違いで、正しくありません。
正確には・・・といっても、家族の状況や保険料により異なるため概算では、年収1,000万円だと、所得税と住民税を合わせて約145万円、年収の1,000万円に対して約15%となります。
年収と所得の違い
誤解のその1は、年収と所得の違いです。
この所得税率の表を見ると、「課税される所得金額」とあります。
これは年収とは異なるものです。
年収、つまり給与収入(額面金額)に、そのまま率をかけるわけではありません。
まずは、所得というものを計算します。
年収1,000万円は、所得780万円です。
1,000万円から引いている220万円は次の表で計算します。
※平成29年(2017年)からは次の表で計算しています。
1,000万円超は一律220万円です。
1,000万円は、660万円超1,000万円以下の区分ですので、
1,000万円×10%+120万円=220万円
と計算します。
1,000万円ー220万円=780万円となるのです。
さらに、ここから、基礎控除(誰にでもある38万円控除)、社会保険控除(年金、健康保険、雇用保険などを全額)、生命保険料控除(支払った金額に応じて控除)などを差し引きます。
医療費や寄附もここで引くものです。
概算でその金額を引くと(人によりこの金額は異なります)、年収1,000万円が所得780万になり、さらに課税所得として632万円になります。
この3段階の計算方法が、複雑なので大きな誤解を生んでいるのです。
年収と所得は違いがあり、給料は税金上優遇されていることを認識しておきましょう。
所得税の税率の考え方
課税所得(課税される所得金額)である632万円をこの表でみて、20%をかければいいのでしょうか。
632万円に20%をかけると、126万円になります。
これは間違いです。
この表は、632万円に20%をかけて、42万7,500円をひくことを意味します。
結果、632万円×20%ー42万7,500円=836,500円となるのです。
なぜこのような計算式なのでしょうか?
それにはこういった意味があります。
632万円のうち、195万円までは5%、195万円超330万円以下の部分は10%、それ以上の部分は20%で計算するのです。
結果、
195万円×5%=97,500円
(330万円ー195万円)×10%=13万5,000円
(632万円ー330万円)×20%=60万4,000円
これを足すと、836,900円になります。
段階的に、税率が上がっていくしくみです。
(累進課税といいます)
上記のものに、復興特別所得税(所得税の2.1%)、住民税(課税所得の10%)を足すと、年収1,000万円の税金は合計で約145万円となります。
だいたい、15%ということなり、40%、半分というものとはかけ離れているのです。
まとめ
「年収1,000万円くらいが一番苦しい」といわれることも多く、そのため税金が多くかかっているというイメージもあるのかもしれません。
実は、税金部分は15%であり、社会保険料(健康保険、年金など)を合わせても30%です。
決して少ない金額ではありませんが、「半分持って行かれる」と比べると、かなりの差があるでしょう。
「年収1,000万円くらいが一番苦しい」というのは、年収、つまり見かけの収入だけが増え、知らず知らずのうちに、生活コストが上がっていることが原因かもしれません。
税金のしくみをしる他、手取りがいくらか、いくらのお金を使っているかを把握することが一層大事になるのです。
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