マイナンバーは、拒否できるのでしょうか。
拒否できるかどうか、拒否して意味があるのかについて考えてみました。
※住民票取得後に目黒川沿いにて。iPhone 6s
マイナンバーを受取拒否できる?
マイナンバー(個人番号)は、簡易書留により、それぞれの住所(住民票登録)へ送られるものです。
(10月下旬から11月といわれています)
「マイナンバーなんていらない」
「マイナンバーを受け取りたくない」
「マイナンバーを受け取ると、自分の情報がもれてしまう:
と思い、マイナンバーを拒否したいと思う方もいらっしゃるかもしれません。
マイナンバーは、受け取って、その番号を、会社や取引先等へ提出し、会社や取引先等が税務署や役所への書類に利用するものです。
「拒否」を考える場合、
・受取を「拒否」
・提出を「拒否」
の2つが考えられます。
受取拒否をするなら、簡易書留を受けとらなければすみます。
ただし、受け取らないからといって、マイナンバーが付けられないということはありません。
自分自身がマイナンバーを知ることができないだけで、マイナンバーはもうすでに付けられているのです。
マイナンバーはもう付けられている
各自治体では、住民票の写しを受け取るときに、「個人番号」つまり、マイナンバーを表示するかどうかを選べるようになっています。
ここにチェックを入れると
住民票にマイナンバーが表示されます。
私が住民票をとったのは、マイナンバーの通知を受け取る前ですので、受け取るかどうかにともかく、マイナンバーの利用はもうはじまっているということです。
受取拒否をすればマイナンバーが付けられないということではありません。
つまり、受取拒否は意味がないことになります。
むしろ、自分のマイナンバーがわからないことで、将来デメリットがでてくる可能性もあるでしょう。
・会社員の場合、転職先や就職先がマイナンバー提出を義務づけていれば、入社できない
・フリーランスの場合、取引先がマイナンバー提出を義務づけていれば、取引できない
ということもあるかもしれません。
ひとまず、マイナンバーを受け取っておくのが得策です。
もし届かない場合は、住民票をとれば知ることができます。
(300円と手間がかかりますが)
マイナンバーを提出拒否できる?
次に考えられる「拒否」は、提出の拒否です。
結論から言うと、提出の拒否は難しいです。
マイナンバー提出は義務?
会社は、役所等に提出する書類にマイナンバーを入れることが義務づけられています。
マイナンバーを入れるということは、マイナンバーを集める必要があり、会社員側はマイナンバーを提出しなければいけません。
結果的に、マイナンバー提出自体が義務とも考えられます。
国税庁のサイト(https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/04kokuzeikankei.htm#a2-3-3)のFAQを見ると、次のような記述があります。
Q2-3-2 申告書等に個人番号・法人番号を記載していない場合、税務署等で受理されないのですか。
(答)
申告書や法定調書等の記載対象となっている方全てが個人番号・法人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号・法人番号を記載することはできませんので、個人番号・法人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。
Q2-3-3 申告書等を税務署等に提出する際、個人番号・法人番号の記載がない場合や誤りがある場合に罰則の適用はあるのですか。
(答)
申告書や法定調書等の税務関係書類を税務署等に提出する際に、個人番号・法人番号を記載しなかった場合や誤りがあった場合の罰則規定は、税法上設けられておりませんが、個人番号・法人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務ですので、正確に記載した上で提出をしてください。
「申告書や法定調書等の記載対象となっている方全てが個人番号・法人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号・法人番号を記載することはできませんので、」
ということは、
「従業員や個人番号・法人番号を持っていれば、記載しなければいけない」
ということになります。
一方で、気になるのは、次のFAQです。
Q2‐10 従業員や講演料等の支払先等から個人番号の提供を受けられない場合、どのように対応すればいいですか。
(答)
法定調書作成などに際し、個人番号の提供を受けられない場合でも、安易に個人番号を記載しないで書類を提出せず、個人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝え、提供を求めてください。
それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。
経過等の記録がなければ、個人番号の提供を受けていないのか、あるいは提供を受けたのに紛失したのかが判別できません。特定個人情報保護の観点からも、経過等の記録をお願いします。
なお、法定調書などの記載対象となっている方全てが個人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号を記載することはできませんので、個人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。
「それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。」とあるので、どうしても拒否したい場合は拒否できるとも考えられます。
ただし、会社からの心証は悪くなるでしょうし、就業規則(きちんと機能していればの話ですが)に「マイナンバーを提出すること」が記載されていると、会社の法律として義務づけられます。
受取拒否をして、「届かなかったです」といって提出拒否をできる手も考えられますが、その場合は、会社に「住民票をとってきてください」といわれてしまいますので意味はありません。
フリーランス(個人事業主)の場合は、業務契約書や覚書にマイナンバー提出が記載されていれば、義務づけられ、拒否すると仕事を受けられなくなる可能性もあります。
どうしても提出したくないときは、法人化するのも手です。
法人は、マイナンバー(法人番号)となり、取引先へマイナンバー(個人番号)を提出する必要はありません。
(もちろん、それだけの理由での法人化は手放しでおすすめできませんが)
仮にマイナンバー提出を拒否した場合
仮にマイナンバーを提出拒否をしても、会社はこれまでどおりマイナンバーなしで、収入や税金の額を税務署や役所へ提出します。
その役所は、すでにマイナンバーを持っているので紐付けるのは簡単です。
税務署も、役所からマイナンバーの情報を引き出し、紐付けることができます。
(手間はかかるでしょうが)
受取拒否、提出拒否をしたから安全になるということもありません。
何がばれるか、もれるかを考える
提出を拒否したいのは、自分の情報がばれる、もれる心配があるからだと思います。
何がばれるか、もれるかを把握しておきましょう。
会社が把握する情報
・氏名(本名)
・住所(住民票登録地)
・生年月日
・性別
・その会社が支払った給料→(個人事業主の取引先の場合は報酬)
・年末調整で提出している情報→(個人事業主の取引先の場合は、なし)
これ以外は知りようがありません。他の情報は、個人番号カードというICカードを使ってパスワードを入れて専用サイト(2017年1月から利用できるマイナポータル)にアクセスしなければいけません。
「副業がばれる」という心配も多いかと思いますが、それはマイナンバー導入以前からも変わらないことです。
そのしくみは記事にも書きました。
【関連記事】マイナンバーでばれるもの・ばれないもの。税務署・会社・家族に、副業・貯金・借金はばれる? |EX-IT
リンク
会社へ提出を拒否しても、役所や税務署が情報を漏らしたら意味がありません。
むしろそちらの方が心配です。
今回住民票をとったのは、区役所の地域センター(住民票がとれるところ)でした。
こういったところもマイナンバーを取り扱うのです。
受取拒否・提出拒否をしたところで、われわれが情報漏洩を防ぐことはできません。
会社や取引先へ提出拒否をして、心証を悪くするよりも出しておいた方が得策です。
ただし、きちんと管理しているかどうかは確認しましょう。
昨日は、夜に、税理士の時間術セミナーを開催。
(シークレットで開催したものです)
参加者で情報交換もでき、私も刺激になりました。
【昨日の1日1新】
※詳細は→「1日1新」
税理士の時間術セミナー開催
マイナンバー入り住民票
【1日1節】
時間術の本を1日1節書く。12月22日完了予定。
20/84
【11/8までに200km】49.9km
■著書
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