TKCの会計ソフトFX2から弥生会計へデータを移行。
私自身もやってきたことであり、仕事でもご依頼いただくものです。
少々難しいのですが、Excelでやりようはあります。
※Keynoteで作成後、スクリーンショット
会計ソフト間のデータ移行はExcelを使う
会計ソフトは切り替えのハードルが一見高いものです。
ただし、その切替は、私が税理士業界に入った2001年からやっています。
会計ソフトは、それぞれの会社が作っているので、当然、データ移行のしくみを入れていません。
会計ソフト間のデータ移行は、Excelを使うことになります。
今回の事例は、TKC(会計ソフトFX2)から弥生会計へのデータ移行です。
TKCからデータをExcelへエクスポート(切り出し)
↓
そのデータを弥生会計用に並べ替える
↓
弥生会計へインポート(取込)
という流れでデータを移行します。
会計ソフトは、インポート(取込)の形式が決まっていますので、そのとおりにデータを作れば取りこめるのです。
【関連記事】Excelから弥生会計へのインポートの基本・発展・マクロ
リンク
TKC FX2のデータが取り扱いにくい理由
TKCの会計ソフトは独特の形式です。
そのためExcelでのデータ加工、会計ソフト変更がやりにくくなっています。
(あえてなのかもしれませんが)
ただ、不可能でありません。
TKCと弥生会計のデータを並べてみました。
日付、摘要等の違いはExcelの処理でなんとでもなります。
問題は、消費税コード。
通信費 / 現金 108 という取引は、通常、会計ソフトでは、
通信費 (課税) / 現金 (対象外) 108
と、借方科目、貸方科目それぞれに消費税コードがつきます。
科目に消費税コードが紐づけされているからです。
TKCの場合、
(課税) 通信費 / 現金 108
と借方・貸方の区別をせずに1取引(仕訳)につき、1つの消費税コードがつきます。
(課税) 通信費 / 現金 108 の場合だと、「通信費」は課税になりうる、「現金」は課税になりえない・100%対象外ですので、1取引に1つの消費税コードでも問題はないのです。
そのため、
・支払手数料/売上高
・法人税、住民税及び事業税 / 受取利息
・消耗品費/旅費交通費
といった貸方・貸方の消費税コードが異なる取引は入力できないようになっています。
データ移行するときにここがネックになりうるのです。
TKC FX2から弥生会計へのデータ移行のしくみ
データ移行に使うExcelのしくみは次のとおりです。
しくみを作れば、
① TKCから仕訳データを切り出す
② ①をExcelのシート「FX2」に貼り付ける
③ シート「弥生」の数式を仕訳データの数だけコピーする
④ Excelのシート「弥生」を新規ファイルへコピーしCSV形式で保存する
⑤ ④を弥生会計で取り込む
⑥ 取り込んだデータをチェックする
で移行できます。
しくみの部分は、②と③にからむところです。
シート「TKC」をシート「弥生」のように並べ替えて加工すれば、移行はできます。
ただ、手作業では大変です。
一度きりならよくても、繰り返しやる場合、毎月やる場合はとてもやってられないでしょう。
そこで、シート「弥生」に数式を入力して、シート「TKC」からデータを連動します。
日付
日付が「281108」と入っているのがやっかいです。
これだと、Excelで日付とみなしません。
「281108」を「28」、「11」、「08」にわけて、年、月、日と処理します。
使うのはDATE関数です。
28はそのままだと年で読み取りませんので、西暦に変換しましょう。
平成の「年」に1988を足せば、西暦になります。
科目・補助・金額・税額・摘要
借方と貸方の科目や補助など、摘要は、次のような数式で連動します。
補助は、「もし空欄だったら空欄にする」という処理です。
そのままだと補助科目に0が入ってしまいます。
摘要は、TKCの取引先と摘要を「&」でくっつけましょう。
間にブランク「” “]を入れておいたほうが見やすいです。
A列の「2000」、T列の「0」、Y列の「no」は固定で入れておかないとエラーが出ます。
消費税コードの処理
問題の消費税コードの処理です。
TKC
(課税) 通信費 / 現金 108
を
弥生会計
(課税) 通信費 /(対象外) 現金 108
と変えなければいけません。
まず、対象外の科目を判定し、先に、消費税コードをつけます。
通信費 / (対象外)現金 108
こうしておけば、相手の科目(この場合は通信費)は、その仕訳についている消費税コードをつければいいわけです。
TKC
(課税) 通信費 / 現金 108
なら、
弥生会計
(課税) 通信費 /(対象外) 現金 108
TKC
(対象外) 通信費 / 現金 108
なら、
弥生会計
(対象外) 通信費 /(対象外) 現金 108
です。
それぞれこういった数式を入れます。
シート「コード」にはこういった表を作っておきましょう。
コード表1 A列からB列に、TKCの消費税コードと消費税区分の対応表
コード表2 D列からE列に、消費税区分が「対象外」の科目リスト
を作ります。
TKCでは消費税コード(0、1、7、8など)で処理しますが、弥生会計では区分名(対象外、課税売上、課税仕入等)で処理します。
借方消費税は、
「TKCの借方科目をコード表2のD列から探し、もしリストにあれば「対象外」と表示し、リストになければ消費税コードがつくので、TKCの取引の消費税コード(シート「TKC」のF列)を表示し、かつ、コード表1から消費税区分名を探し出して表示」
というしくみです。
IFERROR関数を使い、=IFERROR(最初の処理、エラーの場合の処理)というしくみで、このように考えます。
便利なので覚えておきましょう。
上記の数式を、シート「弥生」の一番上の行(この場合2行目)に入れておけば、シート「TKC」のデータ数だけコピーすれば、弥生データを作れます。
TKCから他のソフトへ変えたいという方は試してみていただければ。
私自身もその方法で、切り替えましたし、お客様からの希望で変更したこともあり、税理士事務所からの依頼でデータ移行することも多いです。
(個別コンサルティングで承っております)
TKCで部門を使っているとさらに複雑になります。
FX2では部門データファイルを別に持つからです。
通常の仕訳データ、部門別の仕訳データを取り出し、それぞれを変換しくっつける必要があります。
Excelマクロを書けば自動処理可能です。
今回事例も、「データの数だけコピー、CSVファイルで保存」の部分はマクロを使っています。
使いにくい、髙い、もっといいものが出たとなると、自由にソフトを変更できる時代です。
「今は」というよりも、10年以上前からそういう時代になっています。
ユーザーはよりよいものを選ぶことができ、ソフト会社はそれをプレッシャーにいいものを作ってくれる。
いい時代です。
ただ、
・値段がわからない
・すぐ無料体験できない(資料請求って・・)
・Excelとの連携ができない
といったソフトは除外するとしても、依然としてこれといった決め手がないのが会計ソフトの現状。
会計ソフトには期待せず器としてしか考えていません。
データをどう加工して考え活かすか?その部分は会計ソフトにはそもそもなく、人が工夫できる部分です。
昨日は、1日1新かつ面白い体験をしたのですが、極秘プロジェクトがらみのため、ブログ&1日1新にはまだ書けません。。
完了したら、まとめて記事にします。
【昨日の1日1新】
※詳細は→「1日1新」
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