キャッシュレス還元事業のおかげで、経理も複雑になっています。
その手間を軽減するにはどうすればいいか、まとめてみました。
※キャッシュレス還元対象店舗にて by α6400
キャッシュレス還元事業の経理が大変になるケース
2019年10月1日から
・消費税が10%に
・軽減税率で、原則として食品、一部の新聞は消費税8%
そして、
キャッシュレス還元がはじまりました。
5%(2%)還元。キャッシュレス・ポイント還元事業の活用方法 | EX-IT
キャッシュレス、つまり現金以外で払えば、5%(チェーン店では2%)が還元されるというものです。
原則としてキャッシュレスで決済した代金が引き落とされるときに還元されますが、コンビニで払ったときは、その場で還元されます。
たとえば、この場合、240円から4円が還元されて、236円となるわけです。
さらには、消費税10%のものと、消費税8%のものの両方があります。
キャッシュレス還元の4円はどちらから引くのか?
そして、一定の場合には、これらの消費税処理も含めて経理しなければいけません。
消費税には、原則(原則課税)と簡易(簡易課税)という2つの計算方法があります。
どちらを選ぶかは、事前に届け出を出す必要があり、何もしなければ原則です。
売上1,000万円を超えたら確認!ネット(e-Tax)で消費税簡易課税制度選択届出書の作成・提出方法。 | EX-IT
売上が1100万円 経費(消費税がかかるもの)が660万円の場合で考えると、消費税をそれぞれ次のように計算します。
〇原則
売上 1100万円→消費税100万円(すべて10%と仮定)
経費 660万円→消費税60万円
差引 100万円ー60万円=40万円
↓
40万円を払う
〇簡易
売上 1100万円→消費税100万円×50%=50万円(すべてサービス業の場合)
↓
50万円を払う
原則は、売上と経費から消費税を計算し、簡易は、売上だけで消費税を計算します。
簡易なら、経費の消費税は関係ありません。
こういったレシートでも、消費税10%か軽減税率8%かは気にしなくていいのです。
簡易ではなく、原則で消費税を計算する場合は、経理がより大変になります。
キャッスレス還元により経理の手間は、原則でも簡易でも消費税免税でも大変になりますが。
このキャッシュレス還元、期間限定ですので、2019年10月1日から6月30日の9か月のみです。
9か月のみとはいえ、経理の手間は軽減したいものでしょう。
キャッシュレス還元は、値引きか収入か
まずは、キャッシュレス還元をどう処理するか。
このレシートの場合で考えてみます。
10%のもので143円、8%のもので97円、計240円の買い物です。
キャッシュレス還元を値引きと考える
キャッシュレス還元を値引きと考えた場合、厳密に計算すれば、キャッシュレス還元の4円を、143円と97円に按分します。
4円*143円/(143円+97円)=2.3円。切り捨てるとして2円と考えると、2円ずつの還元なので、
・143円-2円=141円
・97円-2円=95円
となります。
経理(仕訳)は、
消耗品費 141円 社長借入金 236円
会議費 95円
です。
(社長借入金はなんでもかまいません。個人事業主なら「事業主借」)
・・・とはいえ、こんな按分など手間がかかりすぎてやってられません。
ざっくりどちらかから引けばいいでしょう。
消費税10%のほうがから引けば、
消耗品費 139円 社長借入金 236円
会議費 97円
となります。
上と下でどう違うかというと、消費税を納める金額が増える可能性があります。
こういった取引が9か月間にどれくらいあるかによりますが、そんなに影響なければ値引きとして引いてしまってもかまわないでしょう。
消費税が免税、簡易の場合(経費の消費税を考慮しない)なら、なおさらです。
消耗品費と会議費でわけるのもそれほど重要ではありません。
原則の場合は、10%、8%(軽減)と別れるので、わけておいたほうがいいでしょう。
ただ、143円から4円引くのが暗算なり電卓なりを使うのも手間ではあります。
一応、弥生会計だとこういった電卓モードもありますが。
キャッシュレス還元を収入と考える
一方、この還元を収入とする考え方もあります。
明確な基準はないのですが、厳密には、こちらのほうが妥当かなと。
キャッシュレス還元の2%(この事例の場合)は、国からの補助が店にわたり、それを買った人に還元するしくみです。
実質的には国からの補助金なので、一般的には雑収入という経理をします。
消耗品費 143円 社長借入金 236円
会議費 97円 雑収入 4円
会計ソフトで入力するときは、仕訳入力だと、こうなります。
1行増える感じです……。
(社長借入金/雑収入 -4でもいいかと)
注意したいのは、雑収入は、消費税対象外となること。
補助金扱いと考えるなら、消費税の対象となりません。
振替伝票で入れるならこうなります。
左右(貸借)を合わせられるというメリットはありますが。
(私は振替伝票で入れるのは好きではありませんけど。Excelで入れています)
キャッシュレス還元の経理の手間を軽減
キャッスレス還元、税金の正しい使い方かどうかという是非はありますが、はじまってしまった以上、これ以上の被害はおさえたいものです。
経理の手間は軽減していきましょう。
値引き、収入、どっちが楽か
キャッシュレス還元の値引きと収入の処理は、どっちが楽か。
値引きだと、キャッスレス還元を引いて計算しなければいけません。
ミスする可能性もあります。
収入だと、レシートの金額だけですむのです。
消費税が原則なら、こちらのほうがいいでしょう。
「楽かどうかで決めていいのか?」と思われるかもしれません。
しかしながら、現状、値引きか収入かは明確な基準がなく(今後出るかもしれませんが)、あるとしても金額的にそれほど大きくはならないなら、楽かどうかで決めるしかないでしょう。
これ以上被害を増やさないために。
また、収入=補助金と考えると、今の制度は矛盾があります。
国の制度でキャッシュレス還元は、直営店は対象外です。
コンビニには、直営店とフランチャイズ店があり、補助金扱いなのはフランチャイズ店のみ。
ただ、そうなると混乱もあり(直営店とバレたくない?)、コンビニ各社(セブン、ファミマ、ローソン)は、直営店は独自にキャッシュレスをしています。
(ミニストップは直営店キャッシュレスなしとの報道がありました)
先ほど行った、ローソン フジテレビ店は、直営店っぽいです。
ローソンスマホレジがあり、キャッシュレス還元検索アプリにも出てきません。
それでも、キャッシュレス還元があります。
厳密に処理するなら、直営店は、収入でも消費税の対象(値引き)、フランチャイズ店は、消費税の対象じゃないとなりますが、その区別は難しいでしょう。
あいまいなのです。
どっちみちあいまいなら、経理の手間を考えないほうがいいかと。
万が一、税務調査で指摘されても、それほど大きな金額にはならないでしょうし、見るべきところはたくさんあるので(指摘する税金が大きいところ)……。
なお、前述のとおり、消費税が免税、簡易なら、どちらで処理しても消費税額はかわらないので、好きなほうでいいかと。
私自身の経理は、値引きでやっています。
音声認識入力なので、処理が少ない(前述の例だと値引きだと2つ、収入だと3つ)ほうがいいので。
音声認識経理で売上・経費の重みをより感じる方法。Googleアシスタント&GoogleAppsScript & Googleスプレッドシート | EX-IT
会計ソフトの工夫
会計ソフトでも工夫はできます。
軽減税率8%の科目を別につくり、その消費税を8%(軽)にしておくのです。
※最初に10%になるころ、2016年2月に書いた記事。早すぎました。
消費税10%・軽減税率で、経理はどうなる? | EX-IT
会議費なら、10%の場合は、通常の「会議費」、8%なら「会議費(8%)」と。
決算書項目をどちらも「会議費」にしておけば、問題ありません。
これはキャッシュレス還元の期間が終わっても有効です。
また、キャッシュレス還元については、
入力すれば、8%(軽)を入ります。
キャッスレス還元も同様です。
このように、科目で内容がわかるなら、摘要は空欄でもかまわないかと。
なお、よく使う科目は、ショートカットキーをqとか固有のものにしておくと速いです。
使わない科目は、科目設定で、削除しておくことも大事です。
通知預金とか、定期積金とか。
なお、ファミマだとこういった数字を見ます。
経費っぽくない事例ですが。
セブンイレブンだとこんな感じです。
nanacoだと、切手をキャッシュレスで買えます(一部店舗のみ)。
切手の場合は、キャッシュレス還元の適用外なので、値引き処理のときはご注意を。
(切手からは引けない)
また、経理するときは、切手を消費税10%で入れます。
使ったときに税金がかかるという考えなのですが、そうすると経理が複雑になるので、買ったときに消費税課税にするのです。
レシートには「非課税」とでるので特殊ですが。
Excelでやるなら
Excelでやるなら、収入としてシンプルに入れる場合こうなります。
3行も……。
こういったフォーマットに入れると、データ形式にするマクロをつくってみました。
グレーの部分に入力して、仕訳作成ボタンまたはCtrl+Shift+Kを押すと、マクロが実行され、
次のレシートを入れて、ボタンまたはショートカットキーでマクロを実行すると、
データが蓄積されていきます。
適度なところで、取り込んでいただき、ここは空欄にしていただければ。
(弥生会計形式にすることもできます)
サンプルはこちらです。
コードはこういうものを書きました。
即席で不格好ですが。
還元額のところはIFで処理を分けました。
金額欄が空欄のものは転記しません。
試してみていただければ。
Sub keigen() 'シート「input」の行 Dim Input_row 'シート「data」の行をカウント Dim Data_row Data_row = Worksheets("data").Range("a" & Worksheets("data").Rows.Count).End(xlUp).row + 1 'シート「input」の2行目から5行目までを転記 For Input_row = 2 To 5 If Range("b" & Input_row).Value <> "" Then '金額が空欄じゃない場合のみ処理 '日付 Worksheets("data").Range("a" & Data_row).Value = Range("f2").Value '借方 If Range("a" & Input_row).Value = "還元" Then Worksheets("data").Range("b" & Data_row).Value = Range("g2").Value Else Worksheets("data").Range("b" & Data_row).Value = Range("c" & Input_row).Value End If '貸方 If Range("a" & Input_row).Value = "還元" Then Worksheets("data").Range("c" & Data_row).Value = Range("c" & Input_row).Value Else Worksheets("data").Range("c" & Data_row).Value = Range("g2").Value End If '金額 Worksheets("data").Range("d" & Data_row).Value = Range("b" & Input_row).Value '摘要 Worksheets("data").Range("e" & Data_row).Value = Range("d" & Input_row).Value Data_row = Data_row + 1 End If Next End Sub
■編集後記
昨日はリハビリの日。
筋力や歩くスピードを測定。
2か月前よりもだいぶやわらかくなっています。
一般的にはまだまだですが。
スピードも9秒が5秒になっていました。
退院したての9月に実家へ帰ったときは、母についていくのも大変でしたが、なんとか回復しています。
ぼんたぼんた
■娘(2歳)日記
風呂から上がろうとして、落ちたり、いすから降りようとして落ちたり、目が離せません。
ちょっと泣きますが、すぐ復活してまたよじ登ったりします。
■著書
『税理士のためのプログラミング -ChatGPTで知識ゼロから始める本-』
『すべてをがんばりすぎなくてもいい!顧問先の満足度を高める税理士業務の見極め方』
ひとり税理士のギモンに答える128問128答
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