フリーランス(個人事業主)の源泉所得税の処理は、「仮払所得税」という科目を使うと便利です。
※オフィスにて iPhone 6s
売上から源泉所得税が差し引かれる
フリーランス(個人事業主)の場合、売上から10.21%の源泉所得税が差し引かれます(1回の支払が100万円を超える場合は、超える部分については20.42%)。
この源泉所得税は、取引先が税務署に毎月(または半年に1回)、納めるというしくみです。
計算方法には、2種類あります。
1つが、消費税も含めた金額の10.21%。
54,000円(消費税8%込み)なら、54,000円×10.21%=5,513円。
差引で、54,000円ー5,513円=48,487円となります。
もう1つが、消費税抜きの金額の10.21%。
54,000円(消費税8%込み)なら、50,000円×10.21%=5,105円
差引で、54,000円ー5,105円=44,895円となります。
このどちらも認められていますので、取引先がどちらで処理しているかは事前に確認しておきましょう。
明細がある、または自ら請求書を出す場合は、明確なのですが、そうではなく、振込だけある場合は要注意です。
執筆の仕事は、文字数で計算され、振り込まれるケースもあります。
逆算するなら、次のように計算しましょう。
■消費税込みで源泉所得税が計算される場合
48,487円を89.79%で割ると、54,000.4455・・となるので、54,000円に10.21%をかけたとわかります。
■消費税抜きで源泉所得税が計算された場合
44,995円÷89.79%×108÷100=54,000となります。
経理では「仮払所得税」を使うと便利
源泉所得税について経理(会計ソフト)でやるべきことは、「源泉所得税が差し引かれた」という取引を入力することです。
売上を発生時に入力している場合、とそうでない場合で処理が異なります。
■売上を発生時に入力している場合
たとえば、12/1に売上が発生した場合(確定した場合)、
売掛金 54,000 /売上高 54,000
と入力します。
この方法が理想的な方法であり、私がやっている方法です。
・執筆やデザインなら、納品日
・セミナーなら開催日
・コンサルティング、相談なら実施日
など、いつ入力するか決めておきましょう。
※法律的には、「売上が確定した日」と決められています。
この売上の入金が、1/31にあった場合は、
普通預金 48,487 /売掛金 48,487
と入力(自動登録できる場合は登録)します。
売掛金で考えると、54,000円が発生し、入金が48,487円なので差額があるはずです。
これが源泉所得税ということになります。
さらに、振込手数料が差し引かれている場合は、その分も差額です。
差額の分を入力しなければ、正しく経理できません。
一般的には、
事業主貸 5,513/ 売掛金 5,513
と入力します。
ただ、この場合に、「事業主貸」ではなく、「仮払所得税」という科目を作って使うと便利です。
1年間の「仮払所得税」の残高で、チェックをやりやすくなります。
後述するように確定申告のときも楽です。
弥生会計だと、仕訳日記帳で入れるか、売掛金の補助元帳でいれます。
freeの場合、口座登録時に、対応する売上を選べば、
差額を自動推測してくれるので楽です。
自動推測がうまくいかない場合は入力しましょう。
※消費税込の金額の10.21%で計算している場合は自動推測してくれます。消費税抜きだと推測してくれません。
freeeで採用している考え方は、
普通預金 54,000/売掛金54,000
仮払所得税 5,513/普通預金 5,513
というものです。
売掛金全額がいったん入金され、仮払所得税を払ったという形になります。
freeeでやる場合はこの方法で大丈夫なのですが、手入力する場合は、
普通預金 48,487 /売掛金 48,487
と入力して、まず預金残高を正しく入力し確定させるのがおすすめです。
私の場合は、次のようにやっています。
・請求書を出した時点、売上が発生した時点で、売掛金/売上高 をExcelで計上
・入金時に、仮払所得税/売掛金をExcelで計上
・Excelのピボットテーブルで集計してチェック
いちいち入力するのがめんどくさいので、Excelで一括してやっています。
売上を発生時に入力していない場合
売上を発生時に入力していない場合(入金時に入力している場合)は、
普通預金 48,487/売上高 48,487
となりますので、
仮払所得税 5,513/売上高 5,513
と入力します。
支払調書がこない場合、来るのが遅い場合もこの方法で逆算して入力しておきましょう。
なお、支払調書がなくても確定申告はできます。
法律上、本人への支払調書の発行義務はありません。
【関連記事】Amazonが支払調書の古き慣習・誤解を打ち破った件 | EX-IT
リンク
【関連記事】外注先のマイナンバー管理・支払調書作成。支払調書は支払先へ送らなくていい。 | EX-IT
リンク
「仮払所得税」と確定申告
仮払所得税の合計残高は、確定申告書のこの金額と一致します。
(給与等の源泉徴収税額があれば、その分は一致しません)
このチェックのためにも、「仮払所得税」は便利です。
還付されたときの処理
たとえば、仮払所得税の合計残高が256,401の場合で考えてみましょう。
還付で事業用以外の口座に入金されるなら、
事業主貸 /仮払所得税
と入力して、仮払所得税の残高をいったん0にします。
事業用の口座に入金される場合で、全額が還付されたときは、
普通預金 256,401 /仮払所得税 256,401
と入力します。
支払うべき税金が発生し、差額が還付されたときは、
普通預金 191,301/仮払所得税 191,301
事業主貸 65,100/仮払所得税 65,100
と入力し、前年の仮払所得税の残高を0にします。
所得税の支払いは経費にならず、「事業主貸」という扱いです。
源泉徴収という制度はめんどくさく手間もかかりますが、できる限り効率化しましょう。
昨日は午後から個別コンサルティング。
個人事業主の方の確定申告でした。
青色申告に挑戦して2年目。
このタイミングでデータ入力が終わっているのはすばらしいです。
昨日、無事申告書まで作成できました。
【昨日の1日1新】
※詳細は→「1日1新」
モノクルカフェ
■著書
『税理士のためのプログラミング -ChatGPTで知識ゼロから始める本-』
『すべてをがんばりすぎなくてもいい!顧問先の満足度を高める税理士業務の見極め方』
ひとり税理士のギモンに答える128問128答
【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本
「繁忙期」でもやりたいことを諦めない! 税理士のための業務効率化マニュアル
ひとり税理士の自宅仕事術
リモート経理完全マニュアル――小さな会社にお金を残す87のノウハウ
ひとり税理士のセーフティネットとリスクマネジメント
税理士のためのRPA入門~一歩踏み出せば変えられる!業務効率化の方法~
やってはいけないExcel――「やってはいけない」がわかると「Excelの正解」がわかる
AI時代のひとり税理士
新版 そのまま使える 経理&会計のためのExcel入門
フリーランスとひとり社長のための 経理をエクセルでトコトン楽にする本
新版 ひとり社長の経理の基本
『ひとり税理士の仕事術』
『フリーランスのための一生仕事に困らない本』
【監修】十人十色の「ひとり税理士」という生き方