規模が小さく、リスクがあるフリーランスは、事業+家計の貸借対照表が大事です。
フリーランスも、貸借対照表は重要
貸借対照表。会社経営者でもこの表に悩まされることはめずらしくありません。
売上から経費を引いて利益を表示する損益計算書(P/L)と比べると、貸借対照表(B/S)は、その意味がわかりにくいのは事実です。
B/S(バランスシート。Balance Sheet)の方がわかりやすい
貸借対照表というよりも、バランスシート(Balance Sheet)と考えた方がわかりやすいです。
バランスとは、左と右のバランス、残高という意味があります。
B/Sは左に資産、右に負債と純資産(資本ともいいますが、会社の会計での呼び名の「純資産」に合わせます)があり、左右は必ず一致するのです。
B/Sの変化
次の例では、資産が1,000、負債が800、純資産が200(合計1,000)となっています。
フリーランスのB/Sで、最もシンプルな形は次のようなものです。
事業用の口座があり、「預金 800」と表示されます。
事業以外で生活費として引き出したお金は、経費でもなんでもなく、「事業主貸 200」という処理です。
負債として、「事業主借 1,000」が表示されます。
事業主貸、事業主借は、個人事業特有の処理方法で、事業以外、つまり家計とのやりとりを記録したものに過ぎません。
たとえば、フリーランスで、個人用のICカード(Suica、ICOKAなど)、クレジットカード、現金で支払った、仕事の打ち合わせ代は、事業主借で処理します。
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会議費 100 /事業主借 100
という処理です。
3/23のB/Sが次のようなものだとすると、
事業主借が100増えるので、3/24はこうなるはずです。
ただ、これでは、左が1,000、右が1,100でバランスがとれません。
実は、純資産には、利益、つまり売上と経費も載せるのです。
3/23から3/24は、会議費、つまり経費100だけなので、利益はマイナス100となります。
これが、純資産に載ると、3/24のB/Sはこうなり、左右1,000でバランスがとれるのです。
本来は、B/Sだけでもいいのですが、利益の内訳や詳細を知りたくなります。
この場合は、3/23から3/24の利益の詳細、つまり業績です。
その業績を示すのが、P/L(損益計算書)であり、次のようになります。
ちなみに、3/24に売上500があった場合のB/S、P/Lは次のとおりです。
この連動性を把握しておくと、B/Sが理解しやすくなります。
本来はB/Sのみでもいいのですが、B/SとB/Sの間の業績を把握するために、P/Lを作ります。
P/Lは成績、B/Sは現実と未来
これまで見てきたように、P/Lは業績を示す、いわば成績です。
B/Sは現実を表します。
預金がいくらあるか、お金がいくらあるかの厳しい現実です。
いくら過去の成績がよくても、今そして未来のお金がなくなると苦しくなり、事業を続けられません。
P/LとB/Sのどちらが大事か?といわれると、B/Sなのです。
確定申告で作るB/S
税金上、B/Sはこうなっています(青色申告決算書の貸借対照表)。
このB/Sを作ることが、青色申告で65万円控除(65万円を経費にできる)の要件の1つです。
会計ソフトを使えば、自動的にB/Sはできるので、そのできたB/Sを読めるようにしておきましょう。
資産の見方
まず、資産。
期首(通常は「1月1日」)と期末(通常は「12月31日」)の残高を入れるようになっています。
現金、預金(通常の普通預金は、「その他の預金」に入ります)、売掛金(未回収の代金)、棚卸資産(商品等の在庫)、車両運搬具などが一般的によく使うものです。
家計用に引き出した記録である事業主貸もあり、その他、空欄に入るのは、敷金、保証金、長期前払費用(保証協会への保証料の年割)などがあります。
工具器具備品になるものは、青色申告であれば1セットで30万円以上のモノです。
30万円未満なら消耗品費としてP/Lに載ります。
預金以外は、無駄な資産がないか、チェックしましょう。
預金は多ければ多いほどいいのですが、その他のものは、多ければいいものではありません。
連邦が善、ジオンが悪というわけではない、コレステロールに善玉と悪玉があるのと同様に、資産が善、負債が悪というわけではないのです。
負債の見方
負債には、買掛金(未払の仕入代金)、未払金(未払の費用)、借入金、預り金(外注費の源泉所得税)などがあります。
前受金は、前もって払ってもらう代金で、リスクヘッジやビジネスの流れ的にも大事な項目です。
借入金以外の負債は、多くなっても問題ありません。
単に支払を遅らせているだけならダメですが、通常の取引で、末締め翌月払いというように、契約しておけば、それは負債になります。
入金はできるだけ早く、支払はできるだけ遅くというのは鉄則です。
無理な条件を提示されがちなフリーランス、毅然と対応しましょう。
(無理な条件なら断るだけの勇気と、断ってもいいような資金状態を目指しましょう)
純資産の見方
純資産に該当するのは、この部分です。
(資本という名称になっています)
元入金とは、最初に投入したお金に加えて、これまでの事業主借と事業主貸を通算した残高で、法人の資本金と異なり、特段意味はありません。
たとえば、この12/31のB/Sがこのようなものだったら、
翌年1/1のB/Sはこうなります。
12/31時点の資産(事業主貸以外)、負債(事業主借以外)を引き継ぎ、差額を「元入金」にするのです。
純資産であえてみるとすれば、「青色申告特別控除前の所得金額」つまり、P/Lの利益(65万円控除の前の金額)が載っていることを確認しておきましょう。
フリーランスは、事業+家計の貸借対照表が必須
確定申告が終わった今、B/Sを確認してみましょう。
ただ、そのB/Sは、12/31のものです。
今日が3/24ですので、もう3ヶ月ほど前の数字であり、役に立ちません。
3ヶ月もあれば、状況は変わっているからです。
だからこそ、日々の経理が欠かせません。
さらには、B/Sは事業のものだけではなく、家計にもあります。
規模の小さく、風が吹けば倒れる(風が吹かなくても倒れる可能性も)フリーランスは、事業+家計でB/Sを見ておく必要があります。
事業でいくらお金があっても、家計でなくなれば、生活も事業も苦しくなります。
細かい部分はともかく、
・今、現金、預金がいくらあるか
・今後大きな入金、支払(カード払い含む)がいくらあるか
・借入(ローン含む)の返済は、いくらあるか
の3つは常に把握しておきましょう。
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