医療費の確定申告をする手続きが、2017年(平成29年)分から変わりました。
ネットで確認できる「医療費のお知らせ」も利用できるのですが、注意点があります。
医療費の確定申告は、何が楽なのかも考えてみました。
※カフェにて iPhone X
目次
医療費の確定申告は、医療費通知(「医療費のお知らせ」)か、領収書か
医療費の確定申告の方法が変わった
医療費が年間(1月〜12月)に原則として10万円超かかった場合、税金が減る(戻ってくる)可能性があります。
ただし、確定申告しなければいけません。
※医療費とは、診療、薬代、交通費等です。
その方法が変わりました。
2016年分まで | 2017年分から | |
---|---|---|
ネット(e-Tax) | データ入力すれば提出・提示不要
5年間保管 |
提出・提示不要
医療費通知を提出しないときは5年間保管 |
郵送・持参 | 提出・提示必要
提出しないときは |
提出・提示不要
医療費通知を提出しないときは5年間保管 |
これまでは、郵送・持参、つまり紙で提出した場合は、医療費の領収書を提出(郵送)するか、持参して提示する必要がありました。
場合によっては膨大な量になる領収書は大きな負担です。
ただし、e-Tax(ネット)で提出する場合、その明細を入力すれば、提出を省略できます。
私自身も含めてお客様はすべてこちらです。
この場合、領収書を5年間保管しておき、税務署から聞かれたときは提出・提示しなければいけません。
保管を考えると、「提出しちゃったほうが楽」という考えもあります。
税務署に保管してもらえるので。
e-Taxで提出した場合も、領収書を郵送するケースもあるでしょう。
これからは、どんな場合でも、提出・提示は不要になります。
逆にいうと、提出はできなくなるということです。
その代わりに明細書が必須に
領収書を提出しなくてよくなったかわりに、明細書が必須となりました。
これまでも、この「医療費の明細書」はありましたが、
実を言うと、これは必須ではなく、「医療費が多い場合つくってね」という位置づけです。
とはいえ、原則10万円という基準を超えるには、複数の診療になるでしょうし、現実的にはこの明細書をつくっていることがほとんどでしょう。
今後は、この「医療費控除の明細書」が必須です。
よくよくみると「医療費通知」という言葉があります。
医療費通知とは、加入している健康保険を管理運営するところから送られてくる医療費の明細です。
これまでは、「この医療費のお知らせは医療費控除に使用できない」という記述もあり、医療費の確定申告には使えませんでした。
今後、平成29年(2017年)分からは、この医療費通知を確定申告に使えます。
集計したり、入力(記入)したりしなくてよくなるわけです。
(その代わり、医療費通知を提出する必要があります)
国税庁のパンフレットにも、このことはアピールされています。
「領収書が提出不要」「明細書を作成して提出すればOK!」と。
スーパーの確定申告のポスター。
「医療費控除の提出書類が簡素化されます」と。
すばらしいことです。
e-Taxをやっていれば、そもそも領収書なんて提出していませんが、そうでない方には、提出の手間が減ります。
(すべて提出しちゃって保管しないということはできなくなりましたが)
さらには、明細を省略できる医療費通知には罠があるのです。
医療費通知(医療費のお知らせ)の罠
医療費通知には次のような罠があります。
要件を満たしているか
確定申告に使える医療費通知は次のような要件を満たしていなければいけません。
1 被保険者等の氏名
2 療養を受けた年月
3 療養を受けた者
4 療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
5 被保険者等が支払った医療費の額
6 保険者等の名称
地域によっても様式がばらばらで、この要件を満たしていないところもあります。
多くの方が加入している社会保険(会社で健康保険に加入)の全国健康保険協会(協会けんぽ)の医療費通知(医療費のお知らせ)は、確定申告に使える医療費通知です。
さらには、上記の要件を一部満たしていない場合もあります。
4の病院名が抜けている場合もです。
その場合は、自分で修正しなければいけません。
来るのが遅い
医療費のお知らせの場合は、例年翌年の2月に送られてきます。
早目に確定申告したい方には大きなデメリットでしょう。
私は記事執筆現在(2018年1月24日)、2017年の確定申告は2018年1月4日に終わらせています。
昨年は娘がうまれ医療費もありました。
2月の、しかもいつくるかわからない医療費のお知らせなど待ってられません。
(医療費のお知らせを使わなくても確定申告はできます。後述します)
11月、12月分がない
2月に来る医療費のお知らせは、前年の1月〜12月分ではありません。
2018年2月に来る医療費のお知らせで言えば、2016年11月から2017年10月分です。
2017年11月と12月分がありません。
その分は、領収書を集計して、これまでのように入力(記入)しなければいけないのです。
金額が違う場合がある
医療費のお知らせは金額が違っている場合があります。
たとえば、助成があったり、高額療養費だったりした場合、自己負担額が異なっているのです。
これはしくみ上、あとから補填されるので仕方ないといえば仕方ないのですが、注意しましょう。
載っていないものもある
医療費のお知らせは、健康保険証を使った場合は記載されているはずですが、医療費の確定申告の対象となるのは、「保険証を使った」という基準ではありません。
医療費のお知らせに載っていないものもあるのです。
たとえば、はり(鍼)による治療や、薬代、交通費などは、これまでどおり集計しなければいけません。
どっちみち領収書は捨てられない
医療費のお知らせを使っても、すべての領収書は捨てられません。
医療費通知にない領収書は、5年間保管する必要があります。
実際の支払額と端数が違う
小数点以下の処理で、医療費のお知らせと実際の支払額が違う場合があります。
自分と扶養している家族しか載らない
医療費のお知らせは、本人とその扶養している家族の分しか載りません。
たとえば、私の場合、妻は会社の健康保険に入っているので、医療費のお知らせには載らないのです。
医療費の対象は、扶養してるかどうかではなく、その医療費を払ったかどうかで決まります。
医療費のお知らせに載ってなくても、払っていれば対象ですので、別途集計しなければいけません。
医療費のお知らせ(医療費通知)を使って楽になるのかどうか。
なによりも、来るのが遅いのがネックです。
そこで、試してみたのが、ネットで確認できる「医療費のお知らせ」。
ネットなら2月を待たずに確認できます。
ネットの「医療費のお知らせ」のメリット・デメリット
ネットの「医療費のお知らせ」
ネットの「医療費のお知らせ」は、こちらから確認できます。
https://service502.kyoukaikenpo.or.jp/TWKA02_prd/TWKA02/T7F003200.seam
ただし、この辺のシステムにありがちな、めんどくさい手続きが必要です。
利用申請すると、IDとパスワードが【郵送】で送られてきます。
3日ほどで届きました。
ログインして「問い合わせ」→「状況確認」で確認できます。
パスワードを間違えると、使えなくなるので注意です。
不覚にもロックされました。
「お問い合わせください」と出て、「電話か・・」と嫌だったので、しれっと再度利用申請。
無事使えるようになりました。
保険証番号を入れるのですが、重複登録はOKのようです。
(それ以前にアカウントロックされないようにしましょう)
ネットの「医療費のお知らせ」のメリット
ネットの「医療費のお知らせ」だと、今の時点(2018年1月24日)でデータをみることができます。
2月まで待たなくてすむわけです。
さらには、データを加工できます。
直近2年分をみることができ、期間を区切ることができるので、平成29年分(1月〜12月)という指定も可能です。
紙の「医療費のお知らせ」は、一昨年の11月から昨年の10月までの医療費であり、1月〜10月までを計算(一昨年分を引く)しなければいけません。
ネットならその必要はなくなるのです。
範囲を指定してコピーすれば、Excelに貼り付けて加工もできます。
貼り付けた後、このオプションで[貼り付け先の書式に合わせる]を選びましょう。
これで使えるようになります。
前述のとおり、医療費のお知らせの金額をそのまま使えず(時期の問題、金額の問題など)、そのうちに実際に払った金額を計算しなければいけません。
その場合にも役立つでしょう。
(その旨を医療費のお知らせに手書きで反映しなければいけませんが)
ネットの「医療費のお知らせ」のデメリット
一方でデメリットもあります。
この注意書きにあるとおり、
・毎月1回、21日にしかデータが更新されない
・3ヶ月前のデータしか見ることができない
のです。
私が照会した、2018年1月21日だと、10月分までしか見ることができませんでした。
要は紙と同じです。
仮に、2月21日以降だとしても、11月分まで。
3月21日以降だと、確定申告の期限は過ぎています。
「医療費のお知らせ」が前年10月までなのは、保険料請求の仕組み上の問題で、紙だからというわけではないということです。
さらには、ネットの「医療費のお知らせ」をプリントアウトして書類として使えません。
紙の「医療費のお知らせ」と同様、
・11月、12月分がない
・金額が違う場合がある
・載っていないものもある
・すべての領収書は捨てられない
・実際の支払額と端数が違う
・自分と扶養している家族しか載らない
というデメリットは同じです。
ネ申エクセルならぬ、ネ申データでしかありません。
実際の医療費とネットの「医療費のお知らせ」の違い
私の実際の医療費(2017年)は、577,333円でした。
ネットの「医療費のお知らせ」は、32,991円です。
差額は
・2017年11月、12月の私の分
・妻の保険証を使ったもの
・陣痛のときのタクシー代
・鍼治療
・端数
などでした。
娘の場合は、自己負担がなく、その分は反映されていました。
病院名の抜けもありません。
問題はチェックが大変なことです。
医療費のお知らせは、月ごとに合算されています。
たとえば、2月の歯医者だとこのように2回を合算されています。
実際は、3,740円と3,590円の2回で、合計7,330円。
10円の差があります。
こういった複数回のものをチェックしていくとなると結構大変でしょう。
まとめ 医療費の確定申告の最適化
領収書を提出しなくていいからといって決してかんたんになったわけではなく、新たな問題も出てきています。
医療費の領収書を送られてくるのが大変だからそれをやめようとしか考えてない感じです。
また、チェックしなくていい医療費は、医療費通知にあり、そうではない間違えやすい医療費は、医療費通知にありません。
間違えやすい医療費とは、予防接種、マタニティヨガ、通常のマッサージ・整体などです。
これらをチェックしやすくするための改正かもしれません。
医療費の確定申告の最適化を考えてみました。
今後、医療費のお知らせに代表される医療費通知がネットも含めて改善されるのかどうか。
確定申告のために動くとは思えず、期待はできません。
現状だと、医療費の確定申告は、このような流れです。
その前の年の11月〜10月の医療費通知から1月〜10月を抜き出し、チェック・修正もしなければいけません。
さらには、11月+12月と医療費通知にないものを従来の領収書集計で入力(記載)する必要があります。
11月+12月+医療費通知にないものは、領収書の保管が必要なので、その分だけ5年間保管することに。
それなら、1月〜12月を領収書集計の方法でやったほうが楽です。
私はこの方法でやりました。
不完全なデータをチェックするほうが手間です。
すべての領収書を保管しなければいけませんが、どっちの手間をとるかですね。
袋につっこんでどこかに置いておけばいいだけですが。
また、医療費通知を使った場合、e-Taxの場合でも医療費通知を提出しなければならないとなると、余計な手間です。
(その分の領収書保管はしなくてよくなりますが)
領収書集計の方法でいいのか?と思われるかもしれませんが、法律上も2019年(平成31年)分までは、従来の領収書方式でいいとされています。
私は、2018年分、2019年分も、医療費通知ではなく、領収書集計でやる予定です。
日々家計簿に医療費をつけていれば、途中経過(10万円を超えるかどうか)もわかりますし、薬代とわけておけばセルフメディケーション(薬代で節税になる)のチェックもできます。
今年(2018年)は、これまでで、11,609円です。
そもそも税金のための行動はおすすめしてません。
医療費で税金が戻ってくるから医療費を記録するのではなく、税金が関わってなくても、お金の使いみちとして、医療費がいくらかかっているかは把握すべきです。
お金の使いみちを把握し、お金の使い方がうまくなり、その先に節税があります。
医療費通知を使うということは、把握していないということになりますのでおすすめしません。
2020年分以降をどうするかは、またそのとき考えます。
医療費通知を使わずに確定申告してもよくなるかどうかわかりませんが、領収書を税務署に送らなければ問題はないはずです。
医療費の確定申告はe-Tax(ネット)で挑戦してみていただければ。
楽ですし、間違いがありません。
ファイナルファンタジーが30周年ということで、自分も年をとったなぁ・・と。
最初のファイナルファンタジーは、1987年12月18日に発売。
15歳の誕生日でした。
記念したブルーレイサントラが発売されたので早速購入。
映像とともに流れる音楽が秀逸です。
買うとMP3(音楽)ファイルをダウンロードでき、iPhoneで聴けます。
【昨日の1日1新】
※詳細は→「1日1新」
FINAL FANTASY 30th Anniversary Tracks 1987-2017
ヘルシオでとんかつ
【昨日の娘日記】
ティッシュをみると、やはり全部出してしまいます。
昨日もやりかけていたので、取り上げて高いところへ。
その後、本を読んでいる私の上に立ってなんかやってるなぁと思ったら、その高いところのティッシュを取っていました。
父を土台にして。
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